会長あいさつ

日本木材加工技術協会 会長就任にあたって

日本木材加工技術協会 会長 服部順昭
日本木材加工技術協会 会長 服部順昭
会員の皆様には日頃から日本木材加工技術協会の活動や運営にご協力とご尽力をいただき、誠に有り難うございます。歴史のある当協会の第14代会長に就任して間もなく2年になります。当協会はその名が示すように、学会の中でも産業に近い会員850名ほどの学術団体であり、会長は、協会の常任理事会や理事会はもとより、木材関連の業界団体からも新年会や総会に招かれること、製材のJAS製品普及推進のための品評審査会で委員長を務め全国6箇所の木材市場で審査を行うこと、日本住宅・木材技術センターの理事を務めることなど、日本木材学会の時とは異なり、産業界との橋渡しを行っている学術団体であることを自覚することとなりました。JAS審査会では帯鋸の走行安定性という博士論文作成のために行った実験が思い出され、その知識がここで役立つことになるとは何かのご縁だと感じています。
協会の立ち位置を把握するには、その歴史を紐解くと効果的ですので、当協会のこれまでの歩みに触れてみたいと思います。
発足は任意団体「日本木材加工技術協会」として1948年(昭和23年)でした。戦後の団塊の世代の真っ直中の時代に生まれたことになります。初代の会長は東京大学農学部の三好東一先生でした。同じ年に北海道支部と関西支部も生まれており、本体と支部が同じ年に発足したという事実からは木材加工技術がこれらの地域で盛んであったことが伺えます。驚いたことは、雑誌の「木材工業」が、その年に15号までが発刊されていたことです。「木材工業」を発行していた(財)林業経済研究所のご理解とご協力によって、その版権を譲っていただき、「木材工業」を本協会の会誌として、昭和23年4月1日の通巻16号より発行するようになりました。
中部支部は1952年(昭和27年)に、九州支部は1961年(昭和36年)に、中国支部は1987年(昭和62年)にそれぞれ発足し、5支部からなる現在の協会のかたちが出来ました。
協会には分野に特化して部会や委員会を設けることが出来ます。現在7部会があり、関連業界団体とタッグを組んで、頻度と温度差はそれなりにありますが、活発に活動しており、部会の分野を技術的に発展させています。設立順に並べますと、1955年(昭和30年)に保存部会と合板部会、翌年に製材木工部会(後に製材・機械加工部会に改称)、1961年(昭和36年)に床板部会(後に木質仕上げ部会に改称)、1969年(昭和44年)に集成材部会、1992年(平成4年)に木質ボード部会、2006年(平成18年)に木材・プラスチック複合材部会となります。 会員が行った研究・開発の成果を発表する場が年次大会です。1983年(昭和58年)に始まり、第7回までは全て東京の木材会館で開催されていましたが、1990年(平成2年)に大阪で開催の第8回を節目として、支部にお世話願ったりして東京以外での開催が盛んになってきました。2016年(平成28年)は宮崎で第34回大会を開催しますが、第8回からの26年間で東京での開催は10回と4割ほどの比率になっています。この中には東京で開催される10年毎の協会創立記念大会が2回含まれていることから、協会活動が全国に広がっていることは間違いありません。その先として、木材産業が盛んな全ての府県で少なくとも1回は開催して欲しいと願うところです。
会員が行った研究・開発の成果は、年次大会での発表だけでは不十分で、学術論文として後生に残す必要があります。それとは別に、木材産業を取り巻く様々な情報も会員に周知する必要があります。最近はインターネットの発達で、速さではそのルートで情報が得られますが、信頼性では専門家で内容を精査して発行される学術雑誌に軍配が上がります。本協会では「木材工業」、英文では"Wood Industry"という月刊誌を編集委員会が責任を持って発行しています。2016年(平成28年)には第71巻を発刊するに至っています。雑誌は巻の他に号という番号が毎号振られています。今年の3月に発行された第71巻3号は通算で828号になります。歴史を感じる数字です。
木材産業で高品質の製品を安定して供給するには工場などでの品質管理が重要になります。管理をしっかり行うにはそのスキルを持った技術者が必要で、スキルの内容については第三者が認定する必要があります。そこで、協会では専門家で組織する委員会を立ち上げ、(昭和40年)に「木材接着士」、次の年に「木材乾燥士」、(昭和56年)に「木材切削士」、(昭和63年)に「構造用集成材管理士」の認定を始めました。これまでに、4,146名、2,302名、424名、250名の「さむらい」が誕生し、技術の進歩は早いことから、その更新制度を検討しているところです。
木材加工・利用に関する産業技術に貢献した業績とわが国の木材産業の発展に寄与する新しい研究・技術開発の業績に対して、木材加工技術賞と市川賞を授与しており、前者は1956年(昭和31年)に後者は2002年(平成14年)にそれぞれ始まりました。市川賞は、昭和44年に(財)日本合板技術研究所がわが国の合板工業技術の発達に貢献された市川栄次郎氏の功績を記念して創設した「市川記念賞」を引継いだものです。
協会はこれまで一般社団法人でした。法人法が改定されたことから、慎重に審議の上、2011年(平成23年)に認可されて、公益社団法人に移行しました。これにより、協会活動は、これまでの会員へのサービスに専念して行われてきたことに加えて、公益的活動をすることとなり、そこでは出血で事業を行わなければなりません。元よりめぼしい収益事業がないことから、協会の運営は厳しいものになっていきます。皆様の暖かいご支援をいただきたいと思います。2018年(平成30年)には創立70周年を迎えます。これに向けての様々な準備を始める時期になりました。
末筆になりますが、適正に管理された森林から生産される木材の活用が、地球環境の保全に大きく貢献できます。当協会は、環境負荷の少ない適正な木材利用を推進するための加工技術に関する学術の振興と技術の向上及び普及を図ることを目的としていますので、これに向かって邁進していきます。今後とも、皆様のご鞭撻を宜しくお願いいたします。